1970年生。1999年総合研究大学院大学文化科学研究科単位修得退学。2002年総合研究大学院大学博士(学術)。日本学術振興会海外特別研究員・ケンブリッジ大学客員研究員を経て、2007年より神戸大学大学院人文学研究科准教授。
①家族変動論:200年のタイムスパンでみる日本の家族
日本の家族がどのように変化してきたのが、現在、どこへ向かおうとしているのかを200年の時間軸で考える。日本の家族は、明治以降の近代化のなかで大きく変化してきた。理念的には、明治期の家制度の影響、大正期から戦後にかけての近代家族イデオロギーの影響、80年代以降はフェミニズムや家族多様化の影響を強く受けてきた。人口学的には、多産多死社会から多産少死社会を経て、少産少死社会へ、社会経済的にも農業社会から工業社会、脱工業社会、グローバル社会へと大変貌を遂げてきた。そのなかで、なにがどのように変化し、なにが変化していないのか、近代化以前の徳川農村の家族をスタート地点に設定し、現代を見通したいと考えている。
歴史人口学的アプローチ:家族変動論を考えるに際し、歴史人口学的アプローチを用いて、徳川農村の家族の実態に迫る。私たちが、家らしい家と考えるような永続性があり、代々継承させるような家がいつどのように展開したのかを、実証的に分析する。
親族ネットワークから現代家族をみる:戦後日本の世帯は、その規模をどんどん縮小させてきた。しかし、現実の家族関係は同居成員だけで完結しているわけではなく、交通機関の発達、コミュニケーション手段の発達をうけ、居住のあり方と家族の関係性は大きく変化してきた。そこで、子育て期に焦点をあて、孫という存在を中心に、新しい家族・親族関係(成人親子・成人したきょうだい、義理の親子など)がどのように再構築されているのか、いないのか、それがこれまでの家族とどのように違うのかを実証的に分析する。
②比較社会学的家族論・家論
歴史的研究、現代的研究、いずれにおいても国際比較、地域間比較を同時に展開する。
学部専門科目
社会学演習、社会学購読、社会調査演習Ⅰ・Ⅱ、社会調査方法論、社会学特殊講義など
大学院専門科目
文化社会学演習、経験社会学演習、社会調査法演習、社会学特殊研究など
〈単著〉
平井晶子 2008『日本の家族とライフコース:「家」生成の歴史社会学』ミネルヴァ書房.
〈共編著〉
森本一彦・平井晶子・落合恵美子編 2022『家族イデオロギー(リーディングス アジアの家族と親密圏 第1巻)』有斐閣.
平井晶子・落合恵美子・森本一彦編 2022『結婚とケア(リーディングス アジアの家族と親密圏 第2巻)』有斐閣.
落合恵美子・森本一彦・平井晶子編 2022『セクシュアリティとジェンダー(リーディングス アジアの家族と親密圏 第3巻)』有斐閣.
藤井勝・平井晶子編 2019『外国人移住者と「地方的世界」――東アジアにみる国際結婚の構造と機能』昭和堂.
平井晶子・床谷文雄・山田昌弘編著 2017『出会いと結婚』日本経済評論社.
〈共著書〉
平井晶子 2020「近世村落における後継者育成の前提条件―歴史人口学の視点から」鈴木理恵編『家と子どもの社会史―日本における後継者育成の研究』吉川弘文館, 69-91.
平井晶子 2020「国際結婚と地域社会」油井清光・白鳥義彦・梅村麦生編『3STEPシリーズ1 社会学』昭和堂, 229-241.
李璟媛・呉貞玉・山根真理・平井晶子 2020「性別役割意識と実態」『研究集録』175: 57-68.
平井晶子 2019「「地方的世界」における国際結婚の21世紀的展開」藤井勝・平井晶子編『外国人移住者と「地方的世界」――東アジアにみる国際結婚の構造と機能』昭和堂, 337-348.
平井晶子 2019「台湾における定着できた家族のくらし、これからのくらし」藤井勝・平井晶子編『外国人移住者と「地方的世界」――東アジアにみる国際結婚の構造と機能』昭和堂, 219-246.
平井晶子 2019「台湾における「新移民」の支援制度と課題」藤井勝・平井晶子編『外国人移住者と「地方的世界」――東アジアにみる国際結婚の構造と機能』昭和堂, 197-218.
平井晶子 2017「歴史と比較から読み解く日本の結婚」平井晶子・床谷文雄・山田昌弘編『出会いと結婚』日本経済評論社, 1-22.
平井晶子 2016「近世後期における家の確立――東北農村と西南海村の事例」 加藤彰彦他編著『家と共同性』日本経済評論社, 93-113.
平井晶子 2015「宗門人別改帳の記載形式――記載された家族を読む」落合恵美子編『徳川日本の家族と地域性――歴史人口学との対話』ミネルヴァ書房, 435-459.
平井晶子 2015「『家』の確立と家産の継承――陸奥国安達郡仁井田村の事例」落合恵美子編『徳川日本の家族と地域性――歴史人口学との対話』ミネルヴァ書房, 39-61.
平井晶子 2015「東北農村における結婚パターンの変容」笠谷和比古編 『徳川社会と日本の近代化』思文閣出版, 407-423.
森本一彦・平井晶子・小野芳彦 2015「歴史人口学の資料とデータベース」落合恵美子編『徳川日本の家族と地域性――歴史人口学との対話』ミネルヴァ書房, 493-521.
Hirai, Shoko, 2013.3. Rethinking Theories and Realities of the ‘Ie’ in Japan, Takahashi, Motoyasu ed., Finding ‘Ie’ in Western Society?: Historical empirical study for the paralleling and contrasting between Japan and Europe, pp.29-61, Matsuyama
平井晶子 2011 「東北日本における家の歴史人口学的分析―― 一八・一九世紀の人口変動に着目して」 笠谷和比古編『一八世紀日本の文化状況と国際環境』思文閣出版, 215-232.
平井晶子 2009 「変容する直系家族: 東北日本とピレネーの場合」 落合恵美子・小島宏・八木透編『歴史人口学と比較家族史』(比較家族史学会監修 シリーズ比較家族)早稲田大学出版部, 108-129.
平井晶子 2006 「結婚の均質化と『家』の確立: 東北農村の場合」 落合恵美子編著 『徳川日本のライフコース:歴史人口学と家族史との対話』 ミネルヴァ書房, 89-109.
〈論文(単著)〉
平井晶子 2021「三〇〇年からみる家族人口論序説」『社会学雑誌』38: 6-19.
平井晶子 2013 「近世村落における家の変容」『社会学雑誌』30: 78-90.
平井晶子 2011「社会学的家論の再検討(1)――家の比較社会学にむけて」『国際比較研究』7: 73-86.
平井晶子 2007「核家族社会イギリスと直系家族社会日本の親族関係: 比較研究への覚書」『日本研究』(国際日本文化研究センター) 36集: 95-106.
平井晶子 2005「北欧の家族史:直系家族をめぐって」『家族社会学研究』(日本家族社会学会)17-1: 25-30.
平井晶子 2003「近世東北農村における世帯の永続性:歴史人口学的分析」『家族社会学研究』(日本家族社会学会)15-1: 7-16.
平井晶子 2003「近世東北農村における『家』の確立:歴史人口学的分析」『ソシオロジ』 47-3: 3-18.
平井晶子 1998「近世における嫁姑の居住形態:二本松藩仁井田村の事例より」『家族研究叢書』(奈良女子大学生活環境学部) 4: 3-20.
平井晶子 1998「近世における家族観の一試論:『宗門人別改帳』の記載分析を通じて」『社会学雑誌』(神戸大学社会学研究会)15 : 184-199.
〈書評論文〉
平井晶子 2020 小島宏・廣嶋清志編『人口政策の比較史――せめぎあう家族と行政』(日本経済評論社、2019年)『家族関係学』39, pp. 79.
平井晶子 2020 Berry, Mary E. and Yonemoto, Marcia eds., What Is a Family? Answer from Early Modern Japan. (University of California Press, 2019)『人口問題研究』56, pp. 93-94.
平井晶子 2016 石崎昇子『近現代日本の家族形成と出生児数――子ども数を決めてきたものは何か』『人口学研究』52, pp.124-126.
平井晶子 2014 清水浩明『高齢化社会日本の家族と介護:地域性からの接近』(時潮社、2013年)『家族社会学研究』26-1, pp.53-54.
平井晶子 2013 安井眞奈美編『出産・育児の近代:「奈良県風俗誌」を読む』(法蔵館、2011年)『日本歴史』2013年6月号(781), pp. 124-126.
平井晶子 2013 黒須里美編著『歴史人口学からみた結婚・離婚・再婚』(麗澤大学出版会、2012年)『人口学研究』49, pp.73-75.
Hirai, Shoko, 2010, Antoinette Fauve-Chamoux and Emiko Ochiai eds., The Stem Family in Eurasian Perspective: Revisiting House Societies, 17th-20th centuries, 2009, Peter Lang, 『家族社会学研究』22-2, pp.251.
平井晶子 2010 藤見純子・西野理子編『現代日本人の家族: NFRJからみたその姿』(有斐閣、2009年)『社会と調査』(社会調査協会)4, pp.88.
平井晶子 2009 高木正朗編『18・19世紀の人口変動と地域・村・家族―歴史人口学の課題と方法』(古今書院、2008年)『家族社会学研究』(日本家族社会学会)21-1, pp.148.
平井晶子 2008 浜野潔『近世京都の歴史人口学的研究: 都市町人の社会構造を読む』(慶應義塾大学出版会、2007年)『人口学研究』(日本人口学会)43, pp.68-71.
〈学会発表〉
平井晶子 2021「企画セッション「人口からみた近代移行期の日本――近代移行期の世帯と家族」第73回日本人口学会大会 (於:東京大学 オンライン)
平井晶子 2020 「外国人住民の結婚と出生」第72回日本人口学会(於:埼玉県立大学 オンライン)
落合恵美子・森本一彦・平井晶子 2020「アジアの家族と親密圏」 比較家族史学会(於:日本大学 オンライン)
平井晶子 2016 共同パネル「歴史と比較から読み解く現代日本の結婚の諸相」主催、報告「300年」のスパンで見る日本の結婚の現代的特徴」 EACJS(東アジア日本研究者協議会)第1回国際学術大会(於:仁川)
平井晶子 2015「兵庫県但馬地域の国際結婚家族の現状――2014年のアンケート調査を中心に」第63回日本村落研究学会大会(於:和良町民センター)
平井晶子 2015「愛知県刈谷市の事例にみる住宅・居住形態・親族関係――人口減少社会における住宅・家族・コミュニティ (2) 」第88回日本社会学会(於:早稲田大学)
平井晶子 2015「現代日本の親族関係――刈谷市質問紙調査の分析を中心に」第25回日本家族社会学会(於:大手門学院大学)
平井晶子 2015「近世後期における家の確立――東北農村と西南海村」 第57回比較家族史学会シンポジウム「家と共同性」報告(於:札幌大学)
山根真理・平井晶子・李璟媛 2014「現代の地方都市における育児援助ネットワーク:2013年愛知県刈谷市調査データを中心に」第34回家族関係学セミナー(於:大妻女子大学)(共同報告)
Hirai, Shoko, 2014, Household Continuity and Migration in Japanese Farming Villages Between the 18th and 19th centuries, 2014, 4, 23-26(23), ESSHC at Vienne
平井晶子 2012「近世東北農村における家と同族:「家」確立の歴史人口学的分析」第22回家族社会学会(於:お茶の水女子大学)
平井晶子 2012 パネルディスカッション「近世村落における市場経済化と共同性の構造―上塩尻村における蚕種取引と村落社会―」(討論者)第81回社会経済史学会(於:名古屋大学)
Hirai, Shoko, 2012, Rethinking Theories and Realities of the ‘Ie’ in Japan, The 9th European Social Science History Conference at Glasgow University.
300年から読み解く日本の家族
科学研究費補助金基盤研究(B)2017年度-2019年度
(研究代表者:平井晶子)
課題:「300年から読み解く日本の家族/人口論」の構築へむけた実証研究
研究目的
家族は、家から近代家族へ、そして脱近代家族へ向かうと考えられていた。しかし、現実には脱近代化が進んでいない。しかも、今後の変化のゆくえも見えてこない。そこで、本研究では、近代をこえた視野から現代を見る「300 年から読み解く日本の家族/人口論」の構築に挑戦し、現代をとらえる新しい家族認識の手立てを提示したい。応募者らのこれまでの研究から、 人口が増えるというエネルギーは、家族・ライフコースを均質化・標準化するとの仮説を得てきた。仮説が正しければ、人口が減少に転じた今、家族・ライフコースは標準化の圧力から解放されることになる。はたして現実はそうなっているのか。本研究では仮説を補強する歴史的展開の解明に注力しつつも、最終的には現下の家族でおきている萌芽的動きの方向を考察する。
研究計画
「300 年から読み解く家族/人口論」をめざす本研究では、18c から現在までの詳細な人口変動の決定版の図表の作成、人口変動との関連のもと、家族・ライフコースの変動パタンを解明、そのうえで「人口学的近代化」がいずれにおいても「家」の確立やライフコースの均質化、標準化をもたらしたのかを検証、「人口学的近代化」初期の家族・ライフコースの変化がその後も継承されたのか、既存の研究をもとに考察、現在の聞き取り調査から「人口学 的近代化」の終焉が家族に与える影響を検討する。最終的には、これらの研究を統合し、「300年から読み解く新しい家族/人口論」の提示をめざす。
共同研究者
中島満大(県立広島大学経営情報学部准教授)
小池司朗(国立社会保障・人口問題研究所人口構造研究部第二室長)
廣嶋清志(島根大学法文学部名誉教授)
高橋眞一(新潟産業大学経済学部客員教授)
山根真理(愛知教育大学教育学部教授)
李 璟媛(岡山大学教育学研究科教授)
ケア関係の日韓比較
科学研究費補助金基盤研究(C)2016年度-2019年度
(研究代表者:山根真理)
課題:ケア関係と「生の基盤」の再編に関する日韓比較
研究目的
本研究の目的は、東アジアにおけるM字型社会である日本と韓国におけるケア関係再編の様相について、地域社会の歴史的、現代的文脈に即して理解し、2010 年代に実施した一連の調査研究成果とあわせて、ケア関係と「生の基盤」についての総合的な比較考察を行うことである。①多様化と格差拡大、②歴史のなかの現在、③ジェンダーと家族を超える「生の基盤」生成の可能性、の三つの視点をもち、地域に即した実証を通して、「女性だのみ、家族・親族だのみ」のケア関係を乗り越える可能性を探る。
研究計画
本申請研究の主な研究方法は、日韓の地方都市における社会調査である。具体的には以下の段階に沿って研究を進める。
共同研究者
平井晶子(神戸大学人文学研究科准教授)
李 璟媛(岡山大学教育学研究科教授)
私にとっては足かけ一〇年の巨大プロジェクト『リーディングリス アジアの家族と親密圏』(落合恵美子・森本一彦・平井晶子編、有斐閣)がようやく完成。アジア九ヵ国の六五本の論文を掲載した全三巻(一巻家族イデオロギー、二巻結婚とケア、三巻ジェンダーとセクシュアリティ)を三月に揃って出版。アジア研究・家族研究の共有財産になることを願う。本研究会からは小林和美さん、陳玲さんに編集委員としてたいへんご尽力いただいた。翻訳では院生も活躍。科研費プロジェクト「『家』の後継者育成に関する歴史的研究」の成果として『家と子どもの社会史―日本における後継者育成の研究』(鈴木理恵編、吉川弘文館)に「近世村落における後継者育成の前提条件―歴史人口学の視点から」を執筆。社会学研究室は多くの院生・研究生を迎え、かつてない盛況ぶり。社会調査室や読書室の使用には制約があるものの、「活気」のある研究室となり、充実した修士論文卒業論文が揃う。何よりうれしい。大学では大学院委員としてコロナ禍での様々な対応に奔走。怒涛の一年であった。
進学相談などある方は、研究科オープンキャンパスをご活用ください。
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