1994年3月31日発行
A5判272頁
頒価1,200円
11号は、1994年3月をもって神戸大学を退官された長谷川善計教授の「退官記念号」です。長谷川先生は神戸大学の第1回卒業生であり、昭和31年に助手として赴任されて以来、38年の長きにわたって、教育、研究、学内行政に常に全力で当たられ、神戸大学社会学研究室に一時代を築かれました。
巻頭では先生ご自身の執筆による「時の流れのなかで」が掲載されています。先生の子供時代、学生時代、教師時代の多くのエピソードを通して、人間関係のさまざまなあり方、人間関係の大切さが印象深く語られています。ここから人間関係を対象とする社会学の実践的側面を読み取ることができます。
続く「座談会 長谷川先生を語る」、「ソシエテ 長谷川先生の思い出」では、多くの方々との対談や文章から、先生の学生や学問、さらに人生に対する強烈な情熱が伝わってきます。
また論文もヴェーバー論をはじめ多数掲載されており、読み応えのある号となっています。
社会学研究室の歴史―『五十年史』に向けて――
<研究室便り>
<編集後記>
1995年3月31日発行
A5判209頁
頒価1,200円
阪神大震災の被害によって発行不可能と思われた今号でしたが、当初の予定から大幅に遅れはしたものの、無事発行することができました。震災以降の神戸大学や当研究室のようすについては、北原淳(神戸大学)の「阪神大震災と社会学研究室」のなかで刻銘に記されています。また、石山靖男(神戸新聞社)による「危なかった新聞発行」は、震災によって本社ビルに壊滅的被害を受けながらも、一日も休むことなく被災地に情報を提供し続けた神戸新聞の努力を伝えています。
今号では、「比較社会学への展望」と題してアジア社会に関する論考を特集しました。この冒頭には、当研究室で主催したS.N.アイゼンシュタット教授による講演会「日本社会の発展―比較近代歌論の視点から―」の模様と、同教授の比較文明論の理論的枠組みに関する著作の抄訳を配しました。これと同時に、タイ、韓国、日本、中国、フィリピン各国に関する諸論文を掲載しています。
(S.N.アイゼンシュタット:イスラエルのイェルサレム・ヘブライ大学名誉教授。今号で訳出した著作の原題等は、以下の通り。
A Sociological Approach to Comparative Civilizations : The Development and Directions of a Research Program, The Hebrew University of Jerusalem, Jerusalem,1986. )
また、この『社会学雑誌』創刊に尽力され、94年3月をもって退官された長谷川善計教授の退官記念祝賀会・最終講演の模様が報告されています。
長谷川善計教授退官記念祝賀会・最終講義
社会学研究室の歴史──『五十年史』に向けて(その二)――
卒業論文題目一覧
<研究室便り>
<編集後記>
1996年3月31日発行
A5判197頁
頒価1,200円
本号の特集は、「阪神大震災研究」と題して、1995年1月17日の兵庫県南部地震以来、社会学研究室で進めてきた震災調査研究を95年末の時点で総括しています。震災当初の状況については、岩崎信彦(神戸大学)による「阪神大震災による社会解体と再生の苦悩」で詳しく論じられています。また「阪神大震災関係年表」において、震災後9ヶ月間の経緯を追うことができます。
震災直後から行ってきた避難所調査では、神戸市灘区内の避難所約90カ所を訪れ、避難者リーダー・施設責任者・ボランティア代表者などからの聞き取りにより、避難所運営の実態把握に努めました。この避難所調査の成果として3本の論文が掲載されていますが、それらにおいて、多数の被災者を抱え込んだ小・中学校などの<学校>型避難所と、おもに地域の役職者が運営を主導した<地域集会施設>型避難所について、内部の組織化や運営方法の特質が描かれています。また、これらの避難所相互の関係や避難所をとりまく地域との関係についても、人の移動や物資の流れ、既存の地域集団やその役職者が避難所運営にはたした役割などに注目しつつ論じられます。
また、震災復興まちづくりにかかわる継続的な調査報告として4本の論文が収録されています。これらの論文は、灘区のJR六甲道駅周辺の3地区と長田区の鷹取東地区で行われた「まちづくり協議会」の傍聴記録と、全世帯を対象にしたアンケート調査などにもとづきながら、震災後まもなく土地区画整理事業・市街地再開発事業の対象とされた4地区における地域住民の対応や結束の様子が鮮明に描かれています。
また「海外の社会学」欄では、オックスフォード大学の英国デュルケーム研究センター主催の「デュルケーム研究国際会議」(1996年7月)の概要について、大野道邦(神戸大学)がレポートしています。センターへの問い合わせ先は、次の通りです。
Dr W.S.F.Pickering
The British Centre for Durkheimian Studies Institute of Social and Cultural Anthropology:
51,Banbury Road Oxford OX2 6PE
Phone (01865)274671
Fax (01865)274630
社会学研究室の歴史 ―『五十年史』に向けて―(その三)
<研究室便り>
<編集後記>
1996年10月1日刊行
A5判316頁
頒価1,200円
14号は、1995年10月に惜しまれつつ逝去された神戸大学名誉教授・長谷川善計先生の「追悼論文集」です。先生は神戸大学在職中、社会学研究室の発展に尽力され、この『社会学雑誌』も、先生の「社会学と現実社会をつなぐ交流の場をつくりたい」という発案に端を発し、教官、院生、学生、卒業生の協力をもって発刊されることとなりました。
「追悼論文集」は先生の業績にほぼ沿う形で、「社会学理論・学説」「家・家族論」「アジア社会論」「現代社会論」の4つにカテゴライズされ、社会学界、社会学研究室関係の執筆者の協力を得、それぞれ5本前後の論文を収録しています。また神戸大学関連の諸先生方や卒業生の方々からの「長谷川先生の思い出」と題した寄稿が掲載されています。
「社会学理論・学説」では、ドイツ社会学、フランス社会学、アメリカ社会学における理論整理や再解釈、新たな理論提示を、「家・家族論」では、家族研究の動向や、長谷川「家」理論の射程や展開を中心に収録しています。「アジア社会論」では、沖縄、タイ、華僑、長崎県の離島を対象とし、地域性・民族性に富む多様なアジア社会構造についての諸論考を、「現代社会論」では、オウム真理教、クロアチア、混住化、震災といった、日常マスコミで取り上げられる対象を、社会学的に分析した諸論考を収録しています。
なお、第14号は、長谷川先生の一周忌に合わせるため、例年より半年早く出版しています。
故長谷川善計名誉教授略歴
故長谷川善計名誉教授主要著作
<研究室便り>
<編集後記>
1998年3月1日刊行
A5判213頁
頒価1,200円
15号の特集は「文化と社会」です。近年、社会学において「近代的なるもの」の相対化とその批判が、「文化」を焦点として遂行されつつあります。それは「文化」こそがこの「世紀末」社会の変動と根底的なところで連動する、もっと言うならリードするものでありえることを示唆しています。そこで本特集では、内外の状況も念頭に置きつつ、「文化と社会」についていくつかの視点から考察を試みています。大野道邦(神戸大学)は、文化をシンボルとして捉え、シンボルの三特性に対応する、表現、行為、記号としてのそれぞれの文化の今日的意義及びこれらの相互関係を議論しています。油井清光(神戸大学)は、多文化主義、共同体、国民国家、グローバリゼーション、普遍主義という、文化を語る際の枢要な用語について具体的文脈におきながら理論的吟味を行い、アメリカにおける文化的言説と社会的リアリティの微妙な関係について議論を展開しています。田中紀行(奈良女子大学)は、最近の文化社会学の動向、特にドイツのそれを取り上げ、文化社会学が文化と社会との一般的かつ基本的な関連を解明する試みであると明瞭に主張し、文化要因と社会構造を媒介する
、研究法や概念を提出しています。
また特集以外では、海外の社会学として、シーダ・スコッチプル(ハーバード大学)を筆頭に、我が研究室の若手研究者が精力的にフィールドワークを行った成果がふんだんに盛り込まれています。
最後に伝統のソシエテ欄も、黒田敬介(3回生)、田上博之(38回生)、森嶋輝也(38回生)の三名がそれぞれの立場から意義深い主張や報告を寄せています。それとともに北原淳(神戸大学)による「アジア社会科学研究協議会連盟」シンポジウムへの出席リポートも、その雰囲気や議題の焦点までを生き生きと伝えています。
社会学研究室の歴史―『五十年史』にむけて―(その四
<研究室便り>
<短信二題>
<編集後記>
1999年3月1日刊行
A5判210頁
頒価1,200円
16号の特集は「現代イギリスに日本を読む」です。現代のイギリスで問題として取り上げられているものは、福祉、学校教育と家庭、移民など、それらは日本において今まさにクローズアップされつつある領域のものばかりです。それならば現代のイギリスがこれらの問題にどう直面し、どう対応しているかということを見ることによって、我が国でも起こりつつあるアクチュアルな問題に対処する手がかりを探ることができるのでないでしょうか。そこで本特集では、ロジャー・グッドマン、アマンダ・パーマー両教授から、イギリスの児童福祉や中等教育に関する最新の実態報告と分析を寄稿していただき、また、当研究室の若手研究者らによって、イギリスのエスニシティや住宅NPOの問題を取り上げています。さらに卒業生による在英日本人社会の体験記も掲載し、その生き生きとした描写によって、外国人=日本人の視点から現代のイギリス社会の一端を知ることが出来るようにしています。この特集の中には、かつての「英国病」と同じようないわば「日本病」にかからずに済む施策を我が国が講じる手だてとなる材料がきっとあると自負しております。
また、「シリーズ 四年目の震災」では、被災地の復興をめぐる諸問題を取り上げています。このテーマは神戸大学社会学研究会の中心的研究課題として追い続けており、次々と成果をあげているところです。
さらにまた、研究室卒業生の西村由紀子が修士論文をもとにして書いた論文が、第1回国際協力大学生論文コンテスト」で「特選・国際協力事業団総裁賞」を受賞しました。本号ではその全文を掲載しております。
伝統のソシエテ欄も、上住升(3回生)、稲本謙三(31回生)、高山美香(34回生)の三名がそれぞれの立場から味わい深い手記をを寄せています。また、異動のため、編集委員として携わるのは今号が最後となる北原淳先生による研究室への愛情の溢れた回顧録も掲載されています。
《回顧》社会調査室の23年(北原 淳)
〈研究室便り〉
〈編集後記〉
2000年3月1日刊行
A5判233頁
頒価1,200円
本号の特集は、「日本の世界化=世界の日本化」です。これは統合で結ばれたその前半と後半が、相互浸透し同時進行しつつあるひとつの事態であることを端的に示そうとするものです。世界中で2000年という新たな節目を迎え、各国、各地域では、一方でそのことをそれぞれユニークな形、解釈で歓迎しながら、他方で「2000年問題」という、当該国、地域に限定し得ない不安を抱えていたことが思い起こされます。このような例にもその一端が見受けられるとおり、現代社会においてますます急激に進行する社会諸関係の緊密化は、世界の一体化と各地域性の際立ちとを同時に引き起こしつつ、その相互作用からなる影響を、政治、経済領域のみならず、文化領域にまで及ぼしているのです。
そこで本特集では、イスラエルのE・ベン=アリ教授、アメリカのG・アムスタッツ教授、中国の周維宏教授、ポーランドのA・フリス教授といった多彩な国と地域の先生方からご寄稿いただき、当研究室の大野教授、油井教授を加えて、いわゆる「グローバリゼーション」という一連の事態の、空間軸、時間軸を駆使した立体的な把握に、果敢に取り組んでいます。
また海外の社会学のコーナーには、韓国の李昌基教授より同族集団に関する興味深い論文を寄せていただくことができました。
さらに若手院生による、震災、観光、家族企業、文化生産の場、電子メディア論、中国の労働力、組織論といった、多岐に渡るテーマの力のこもった諸論考の中には、本雑誌読者の関心にこたえるものもあるのではないかと思います。
最後になりましたが、伝統のソシエテコーナーには、今号も、田澤耕平、田中恵子、折井秀行の三名によって、「実社会」における生き生きとしたエッセイを寄稿してもらうことができ、本雑誌のもう一つの目的である当研究室卒業生とのリアルタイムの交流という側面も果たされています。学究的関心ともどもお楽しみいただければ幸いです。
〈研究室便り〉
〈編集後記〉
2001年3月1日発行
A5版250頁
頒価1,200円
今号の特集は「現代アジアから日本をみる」というテーマを掲げました。タイ、東南アジア、韓国、沖縄、中国の地域を研究している五名の方に寄稿していただきました。アジアに視点を据えて日本社会をみることが必要だといわれながら、「アジアから日本をみる」という視点からの実質的な交流はあまり蓄積がありません。アジアが多様な世界を構成しており、テーマの設定をはじめ研究方法においても、対象地域の特徴に大きく規定される傾向が強く、アジア地域研究者の間でも関心を共有できないところがあるからです。本号ではこの難しさを少しでも乗り越えたいというところに趣旨がありました。本号の小さな試みではアジア全域を包括することはできませんが、しかし、一線で活躍されている方々がそれぞれの研究の蓄積の上に、自分のフィールドからみるとどのような問題がたてられるか、日本社会研究に何が発言できるかという問題を具体的に提起すると、一つの立体的な像が構成できるのではないかと考えています。
「海外の社会学」に、中国社会科学院の李国慶先生、「特別寄稿」に、神戸大学国際文化学部の三上剛史先生から、それぞれご寄稿頂きました。重ねてお礼申し上げます。
「ソシエテ」へご寄稿していただいた卒業生の皆様、誠にありがとうございました。今後とも、「ソシエテ」欄への多くのご寄稿をお願い申し上げます。
〈研究室便り〉
〈編集後記〉
2002年3月31日発行
A5版214頁
頒価1,200円
第19号は、「転換期の現代社会――二十一世紀の可能性を求めて」と題した特集を組み、〈現場からの報告〉において、実際にさまざまな社会の「現場」活躍なさっている会員の方々から論稿を寄せていただきました。それら生の声を耳にすると、社会学に関心を持つ方の多くは、社会学が社会を分析する学問として閉じこもらず、何らかのかたちでそこにコミットすることはできないか?いや、もっといえば、しなければならないのでは――社会学のあり方について、何度も繰り返されてきたテーマと再び向き合うこととなるのではないでしょうか。しかし、温故知新、古くからの問題に改めて向き合う姿勢こそ、「二十一世紀の可能性を求め」ることにつながるのでは、と考えます。
2003年3月31日発行
A5版241頁
頒価1,200円
20号では当誌20年の歴史を総括してはどうかというご意見を前号にていただきました。これにつきましては、すでに1999年発行の『社会学 教室の50年』おいて充実した回顧特集が組まれており、会員の皆様にもさまざまなご協力をいただいております。そこで編集委員では、回顧特集は『教室の50年』に譲り、むしろ20号の節目を飾るにふさわしい特集を組むことで、実質的意味において新たなページを加えてはどうかという結論にいたりました。
特集「社会学のアイデンティティと多様性」は、以上の経緯をふまえたうえで、会員の共通基盤である「社会学」というディシプリンの原点とそこに張りつめている緊張関係をあらためて確認するという趣旨から組まれたものです。学外からは折原、富永、デロワ各先生に、また文学部からは鈴木、大城、山本、枝川、樋口各先生に、お忙しいなか寄稿をご快諾いただきました。20号を飾るにふさわしい充実した特集とすることができました。
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